「医者の言うことは聞いておけ」by Dr.ホッピー


CMに洗脳されてると"がん"を見落とすからね

咳の症状はちゃんと診断したいから協力おねがい

まず、読者の皆さんに知っておいて欲しい。オイラたちプロの医者でも“咳の特徴だけで病気を診断することはできない”というコトを。すなわち「この咳は結核、こういう咳をしていたらガン」といった診断ができないんじゃ。だからオイラはネホリハホリ問診しなければならない。
一方のアナタ方患者側は「咳=カゼ」。咳が出たら風邪と思い込むようにすっかりTVのCMに教育されており、これが意外に診察の妨げになっておるのじゃ。
恐るべしは製薬メーカー。TVに莫大な費用を投じてきた成果としては大したものじゃが、そのおかげで現場は苦労しておるのだ。
CMでは、“注意しなくてはいけない危険な咳”まではさすがに教えてくれておらん。にもかかわらず多くの患者さんは「カゼなんだから早く薬だせよ!」とばかりにコチラの問診や聴診に素早く的確に答えてくれないことが多いんじゃ。


Dr.ホッピー

特に困るのは、「いつからですか?」との問いに対して、「えっと…最近かな」とのテキトーな回答。そんなやり取りでは、結核やがんは診断できない。
だからコチラもそういう患者ばかりだとイラッときて「ど・の・く・ら・い前からですか」と思わず口調を荒げてしまうワケ。いや、マジでガンの場合ならその段階で見つけておけばあなたに残される時間は大きく変わる可能性があるのじゃ。
ついでに言っておくが「熱っぽい」のと「○△度の熱がある」は全く別の症状じゃぞい。
「熱っぽい…カゼかな?ハイ、クスリ」ってなCMに洗脳されないで欲しい・・・というか、CMは熱っぽいだけでドーシテ「薬飲めっ」て勧めるのかね?まったくもってケシカラン。


話を戻して、今現在、肺結核や肺ガンを患って闘病している方々はどのようにして診断されたのか?それは概ねの場合咳が長引き、どこかのタイミングで医者がそれを疑い、“医者として当然の判断”でレントゲンを撮って診断されたんじゃ。「長引く咳は結核・がんを疑え」そのように我々は“注意しなくてはいけない咳”を教えられているからな。逆に3週間以上、咳が長引いている患者さんにレントゲンを撮らない医者は“ヤブ”ということになるのじゃ。


プチプチいったら肺炎

さて次に、ちゃんと聴診させてくれないのも困る。
熱と咳…。まあ、カゼと診断してもヨロシイのじゃが、ならば同じ症状の“肺炎”はどう診断する? やはりレントゲンだわな。でもサ、熱と咳で受診した患者さん全てにレントゲン撮るか? ノーだよ。その理由は金。検査料で医療費が高騰してしまう。医者の噂も「金儲け」になっちまう。ではレントゲンを撮る撮らないの判断はドコにある?
答えは『聴診』なのだよ。


今夜のお食事

肺っていう臓器はスポンジみたいな構造と思ってくれ。乾いたスポンジへはスーッと空気を吹き込めるが、濡れたスポンジでは空気を吹き込めば水分を弾くようにプチプチって音が出るだろ? 肺の炎症で浸出液が出てくると、その部位は濡れたスポンジと同じ状況になっている。「息を吸ってぇ〜」は肺に空気を吹き込んでいるわけで、炎症のあるトコロでは“プチプチ”が聞こえるのである。で、「肺炎の疑いが…レントゲン撮りましょう」となるワケ。


お分かりか? 「ハイ、息を吸ってぇ〜」をちゃんとしてくれないと病気を見落とすんじゃ。アナタ、見落として欲しいですか? また、「息を吐いてぇ〜」にも情報がある。
奥の方の気管支が細くなる病態(代表的は気管支喘息)では、通常の呼吸では聴取されない「ヒュー」という音が息を吐ききるタイミングで聴取されたり、音が聞こえなくともそのタイミングで咳が誘発されたりして、正診にたどり着ける。

こういった事情を理解すれば、診察に臨むスタンスもかわろうというものではないか?ぜひともそうあってほしいものである。ところで、「息を吸ってぇ〜」の1回だけで聴診器を数か所に移動させて聴診をしているセンセイは、何も聞いていないのと同じってこと。さて、アナタの先生はどんな聴診をしていますか?